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[問題]電験3種 平成28年 理論 問17


問題内容:静電気…平行平板コンデンサ
 難易度:★★★☆☆(標準)
目標時間:8分

※問題は手元の問題集や電気技術者試験センターの公式サイトで確認下さい。
※以下は個人の解答例です。


【解答】
(a)
題意より、”十分大きい平らな金属板で覆われた床と平行な二つの平板電極とで作られる空気コンデンサが二つ並列接続されている”とあるため、この問題は誘電体が空気である二つの平行平板コンデンサの並列接続として考えることができる。

故に、問題図の等価回路は左側と右側のコンデンサの静電容量(キャパシタンス)を {\small{C_{1}{\rm ~[F]}}}{\small{C_{2}{\rm ~[F]}}} とすると、図1となる。
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図1

※問題の図と文は複雑であるかのように書いていますが、書き換えれば図1となり、単純なコンデンサの並列回路になります。


次に二つのコンデンサの静電容量 {\small{C_{1}{\rm ~[F]}}}{\small{C_{2}{\rm ~[F]}}} を求める。

平行平板コンデンサの静電容量 {\small{C{\rm ~[F]}}} は、極板間距離を {\small{d{\rm ~[m]}}}、誘電体の誘電率を {\small{ε{\rm ~[F/m]}}}、極板の面積を {\small{A{\rm ~[m^{2}]}}}とすると、通常 {\small{{\color {red} {C=\frac{εA}{d}}{\rm ~[F]}}}} にて求めることができる(題意より端効果は無視)。
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図2

そのため、{\small{C_{1}{\rm ~[F]}}}{\small{C_{2}{\rm ~[F]}}} は次式より求めることができる。

 {\begin {eqnarray} C_{1} &=& \dfrac{εA_{1}} {d} \\ &=& \dfrac{8.85×10^{~-12}×10^{~-3}} {10^{~-3}} \\ &=& 8.85×10^{~-12} {\rm ~[F]} \end{eqnarray} }

 {\begin {eqnarray} C_{2} &=& \dfrac{εA_{2}} {d} \\ &=& \dfrac{8.85×10^{~-12}×10^{~-2}} {10^{~-3}} \\ &=& 8.85×10^{~-11} {\rm ~[F]} \end{eqnarray} }

※試験本番では制限時間があるため、{\small{C=\frac{εA}{d}{\rm ~[F]}}} を用いて直接静電容量を求めますが、大切なのはそもそもなぜこの式で静電容量が求められるのか、ということです。今回は問題解説なので {\small{C=\frac{εA}{d}{\rm ~[F]}}} の導出は省略しますが、まずそこを理解して下さい。問題を解くのはその後です。


静電容量 {\small{C{\rm ~[F]}}} の定義「単位電位差( {\small{1{\rm ~[V]}}} )当たりの貯蔵電荷」であるから、コンデンサに発生する電位差を {\small{V{\rm ~[V]}}}、コンデンサに蓄えられる電荷 {\small{Q{\rm ~[C]}}} として、定義をそのまま式にすると {\small{C=\frac{Q}{V}{\rm ~[F]}}} となる。

そのため、上式を変形した {\small{{\color{red}{Q=CV}{\rm ~[C]}}}} より、コンデンサに蓄えられる電荷 {\small{Q{\rm ~[C]}}} を求めることができる。

故に、スイッチ {\small{{\rm S} }} を閉じたときに左側と右側のコンデンサに蓄えられる電荷 {\small{Q_{1}{\rm ~[C]}}}{\small{Q_{2}{\rm ~[C]}}}、そして二つのコンデンサに蓄えられる合計電荷 {\small{Q_{0}{\rm ~[C]}}} は次式より求めることができる。

 {\begin {eqnarray} Q_{1} &=& C_{1}V_{0} \\ &=& 8.85×10^{~-12}×1000 \\ &=& 8.85×10^{~-9} {\rm ~[C]} \end{eqnarray} }

 {\begin {eqnarray} Q_{2} &=& C_{2}V_{0} \\ &=& 8.85×10^{~-11}×1000 \\ &=& 8.85×10^{~-8} {\rm ~[C]} \end{eqnarray} }

 {\begin {eqnarray} Q_{0} &=& Q_{1} + Q_{2} \\ &=& 8.85×10^{-9} + 8.85×10^{-8} \\ &=& 9.735×10^{~-8} {\rm ~[C]}…(答) \\ &→& (3) \end{eqnarray} }

コンデンサには電荷を蓄える(充電する)働きがあり、(a)はその蓄えられる電荷を求めさせているスタンダードな問題です。但し、式の暗記がメインである勉強を進めてきた基礎力の弱い方にとっては、B問題特有の長い文章に惑わされてしまうかもしれません。


(b)
まず問題を解く前になぜ問題文のような現象が発生したのかを考えてみる。

(a)ではスイッチの閉→開により、二つのコンデンサには合計で電荷 {\small{Q_{0}{\rm ~[C]}}} が蓄えられた。

次に(b)では、その後右側の可変平行平板コンデンサの極板間距離を増加させたことで、{\small{C=\frac{εA}{d}{\rm ~[F]}}} の関係から、右側の可変平行平板コンデンサの静電容量 {\small{C_{2}{\rm ~[F]}}} {\small{C_{2}^{~'} {\rm ~[F]}}}減少する。…①

右側のコンデンサの静電容量が {\small{C_{2}^{~'} {\rm ~[F]}}} に減少したことで、当然回路全体の合成静電容量も減少する。…②

二つのコンデンサに蓄えられた合計電荷は一定{\small{Q_{0}{\rm ~[C]}}} のまま)であるが、回路全体の合成静電容量が減少してしまったため、{\small{Q=CV{\rm ~[C]}}} の関係より、コンデンサに発生する電圧は上昇してしまう。…③

そして、電圧が上昇してしまったことでコンデンサが絶縁破壊され、最終的に火花放電が生じてしまった、というストーリーである。

※重要なのはこの後の計算ではなく、上記の説明であることは言うまでもありません。計算はただの数学です。まずはここまでの電気の現象を理解して下さい。


では実際に問題を解いていく。

①極板間距離を {\small{d{\rm ~[m]}}} から {\small{x{\rm ~[m]}}} へ増加したことにより、変化した右側の可変平行平板コンデンサの静電容量 {\small{C_{2}^{~'} {\rm ~[F]}}}{\small{C=\frac{εA}{d}{\rm ~[F]}}} の関係より、

 {\begin {eqnarray} C_{2}^{~'} &=& \dfrac{εA_{2}} {x} \\  &=& \dfrac{8.85×10^{~-12}×10^{~-2}} {3.0×10^{~-3}} \\  &=& 2.95×10^{~-11} {\rm ~[F]} \end{eqnarray}}

②このときの回路全体の合成静電容量 {\small{C_{0}{\rm ~[F]}}} は、並列接続のため、

 {\begin {eqnarray} C_{0} &=& C_{1} + C_{2}^{~'} \\ &=& 8.85×10^{~-12} + 2.95×10^{~-11} \\ &=& 3.835×10^{~-11} {\rm ~[F]} \end{eqnarray}}

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図3

③コンデンサに発生する電位 {\small{V_{0}^{~'} {\rm ~[V]}}} は、二つのコンデンサに蓄えられている合計電荷は {\small{Q_{0} {\rm ~[C]}}} で一定のため、{\small{Q=CV{\rm ~[C]}}} の関係より、

 {\begin {eqnarray} V_{0}^{~'} &=& \dfrac{Q_{0}} {C_{0}} \\ &=& \dfrac{9.735×10^{~-8}} {3.835×10^{~-11}} \\ &\fallingdotseq& 2.5385×10^{~3} {\rm ~[V]}…(答)   \\ &→& (3)\end{eqnarray}}

以上。


【類題】
・平成20年問5、13年問8
類題は特に似ている上記の2問以外にもたくさんあります。コンデンサの計算はA問題B問題を問わずほぼ毎年出ているので、しっかり理解して得点源にしたい分野です。

コンデンサに蓄えられるエネルギー {\small{W= \frac{1}{2} CV^{~2} {\rm ~[J]}}} と絡めた問題も出題されているので、是非そちらもやってみて下さい。

【ひとコト】
計算があっていても発生した現象や式の説明ができなければ電気を理解しているとは言えません。日々の勉強では答えを出すことではなく、「なぜこうなったのか?」を考えることが重要です。



受験する方は電気書院かオーム社の過去問題集どちらかは持っておくべきです。
電験3種過去問題集 平成29年版

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2017年版 電験三種実戦10年問題集

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