[問題]電験3種 平成28年 機械 問15
問題内容:同期機…発電機の電圧計算
難易度:★★★☆☆(標準)
目標時間:8〜10分
※問題は手元の問題集や電気技術者試験センターの公式サイトで確認下さい。
※以下は個人の解答例です。
【問題を解く前に】
過去問でも度々出題されている この手の同期機の計算問題については、「一相分等価回路の作図」→「キルヒホッフの電圧則の立式」→「ベクトル図の作図」の基本ができているかどうかで決まります。
上記の基本が理解できていれば後は数を熟すことで解けるようになりますが、逆に基本が疎かであれば参考書は勿論、以下の解答を読んでもしっくりこないかと思います。
そのため、まず同期機の計算問題は、
「一相分等価回路」→
「キルヒホッフの電圧則」→
「ベクトル図」
これら基本となる土台を十分に理解していることが問題を解く上での必要条件になります。
【解答】
(a)
定格時において、一相当たりの内部誘導起電力と端子電圧を と (基準ベクトル)、同期リアクタンスを 、電機子電流を とすると、題意より電機子巻線抵抗は無視できるため、「一相分等価回路」は図1となる。
※発電機と電動機では電機子電流の流れる方向が逆になるので注意して下さい。
図1より「キルヒホッフの電圧則」を立式すると、
定格力率角を とすると、①式より「ベクトル図」は図2となる。
※ここまでが[問題を解く前に]で説明した基本の部分です。この問題は発電機ですが、電動機でもやることは変わりません。
※本番の試験では機械は時間が足りなくなることが多いですが、「一相分等価回路」→「キルヒホッフの電圧則」→「ベクトル図」は必ず書きましょう。(訓練すれば、すぐに短時間で書けるようになります。)
図3において三平方の定理を用いると次式が成り立つ。
※②式において、未知数である と電機子電流 が求まれば、内部誘導起電力 を求めることができます。
電機子電流 は定格出力を とすると、
※定格出力の単位が となっているため、気を付けましょう。
また は、
②式へ諸量を代入し、一相当たりの内部誘導起電力 を求める。
※「ベクトル図」から「三平方の定理」を用いて、誘導起電力を導かせる問題は同期機の定番問題です。まずは基本をしっかり身に付け、その後に類題を解き、最終的には短時間で正確に解けるようにしましょう。
(b)
発電機の励磁を定格状態で保ち、 の平衡三相誘導性負荷を接続した時の一相当たりの端子電圧を とすると、その等価回路は図4となる。
Q.なぜ内部誘導起電力は(a)のときと同じ になるのか。
→題意より発電機の励磁は(a)と同じ定格状態に保たれているため、励磁電流に変化はないので、励磁回路から供給される主磁束 に変化はない。
同期機の誘導起電力 を表す式 ( :巻線係数、 :周波数、 :巻数 )より、誘導起電力は主磁束に比例( )する。
故に、主磁束が一定(励磁電流が一定)であれば、誘導起電力も一定となる。
※同期機の問題はここまでです。あとは交流の回路計算になるので、(b)はどちらかと言うと理論の問題になります。
端子電圧 を求めるため、図4を分かり易く変換した等価回路を図5とする。
図5より一相当たりの端子電圧 はインピーダンスの分圧比より、
※問われているのは端子電圧の大きさのため、ベクトル計算(ドット有)ではなくスカラ計算(ドット無)をしましょう。ベクトル計算をしてしまうと、計算の難易度が極めて高くなってしまいます。
発電機の端子電圧 は線間電圧に変換し、
以上。
※(b)の内容はほぼ理論なので、(a)ができた段階で問15は10点取れるかと思います。しかし、問題文の但し書きの内容(励磁回路に関する内容)の意味はしっかり理解しましょう。
【類題】
・H26年問15、24年問16、23年問4、22年問15、20年問5
過去問では発電機・電動機ともに力率1のケースがほとんどだったので、過去問慣れしてしまっている方は多少面を喰らったかと思います。とは言え、解くための方法は変わらないので落ち着けば解ける問題です。
(b)は変に深く考え込まず、内容は理論であることに気付けば、例年の同期機の問題より難易度は若干優しいです。
計算ミスや のかけ忘れに気を付けて解きましょう。
【ひとコト】
しつこいですが、同期機の計算問題では、
「一相分等価回路」の作図→
「キルヒホッフの電圧則」の立式→
「ベクトル図」の作図
は必須です。
基本を徹底することが応用へと繋がっていきます。
受験する方は電気書院かオーム社の過去問題集どちらかは持っておくべきです。
・電験3種 平成28年 機械 問17