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[問題]電験2種二次 平成28年 機械・制御 問1


問題内容:誘導機…L形等価回路
 難易度:★☆☆☆☆(3種{\small{^{~+}}} レベル)
目標時間:★★☆☆☆(20分以内)

【問題】
定格線間電圧 {\small{200{\rm ~V}}}、定格周波数 {\small{50~{\rm Hz}}}、4極の星形結線の三相かご形誘導電動機があり、L形等価回路において1相一次換算の抵抗値及びリアクタンス値は次のとおりである。
 一次抵抗 {\small{r_{1}=0.707{\rm ~Ω}}}
 リアクタンス {\small{x_{1}+x_{2}^{~'}=0.439 {\rm ~Ω}}}
 二次抵抗 {\small{r_{2}^{~'}=0.710{\rm ~Ω}}}

この電動機が回転速度 {\small{1470{\rm ~min^{-1}}}}で運転しているとき、次の値を求めよ。ただし、鉄損、機械損、励磁電流は無視する。
(1)一次電流
(2)二次入力
(3)電動機の軸出力
(4)二次鉄損
(5)電動機の効率


※以下は個人の解答例です。

【解答】
(1)
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一次電流 {\small{I_{1}}}は定格での電圧を {\small{V}}、電動機のすべりを {\small{s}} とし、励磁電流を無視すると、等価回路より次式にて示される。

  {I_{1}=\dfrac {V} {\sqrt {(r_{1}+\frac{r_{2}^{~'}}{s})^2+(x_{1}+x_{2}^{~'})^2}}\rm ~[A]…①} 


※等価回路から立式しただけの単純な交流回路計算です。
※①式は本来は一次負荷電流を求める式ですが、題意より励磁電流は無視とあるため、直接一次電流を求めることができます。


①式のすべり {\small{s}} 以外の値は題意より与えられているため、次にすべり {\small{s}} を求める。

同期速度 {\small{N_{s}}} は定格周波数を {\small{f}}、極数を {\small{p}} とすると、

 {N_{s}=\frac{120~f}{p}=\frac{120~×~50}{4}=1500{\rm ~[min^{-1}]}}

回転速度が {\small{N=1470{\rm ~[min^{-1}]}}}のときのすべり {\small{s}} は、

 {s=\frac{N_{s}-~N}{N_{s}}=\frac{1500~-~1470}{1500}=0.02}

①式へ諸量を代入し、一次電流 {\small{I_{1}}}を求める。

 { \begin {eqnarray} I_{1} &=& \dfrac {V} {\sqrt {(r_{1}+\frac{r_{2}^{~'}}{s})^2+(x_{1}+x_{2}^{~'})^2}} \\ &=& \dfrac {\frac{200}{\sqrt{3}}} {\sqrt {(0.707+\frac{0.710}{0.02})^2+(0.439)^2}} \\ &\fallingdotseq& 3.1889 \fallingdotseq 3.19{\rm ~[A]}…(答) \end{eqnarray}}


(2)
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※上図は電力の発生場所とその電力のフロー図です。非常に重要な図なのでセットで理解して下さい。

二次入力 {\small{P_{2}}}{\small{\dfrac{r_{2}^{~'}}{s}}} での発生電力のため、
 { \begin {eqnarray} P_{2} &=& 3~I_{1}^{~2}~\dfrac{r_{2}^{~'}}{s} \\ &=& 3×3.1889^2×\dfrac {0.710} {0.02} \\ &\fallingdotseq& 1083.0 \fallingdotseq 1080{\rm ~[W]} …(答)  \end{eqnarray}}


※三相なので、×3を忘れずに。(3)(4)も同様。

(3)
電動機の軸出力 {\small{P_{o}}} は題意より機械損を無視すると、{\small{\dfrac{1-s}{s}~r_{2}^{~'}}} での消費電力のため、

 { \begin {eqnarray} P_{o} &=& 3~I_{1}^{~2}~\dfrac{1-s}{s}r_{2}^{~'} \\ &=& 3×3.1889^{2}×\dfrac {1-0.02} {0.02}×0.710 \\ &\fallingdotseq& 1061.4 \fallingdotseq 1060{\rm ~[W]}…(答) \end{eqnarray}}

(4)
二次銅損 {\small{P_{c2}}}{\small{r_{2}^{~'}}}での消費電力のため、

 { \begin {eqnarray} P_{c2} &=& 3~I_{1}^{~2}~r_{2}^{~'} \\ &=& 3×3.1889^{2}×0.710 \\ &\fallingdotseq& 21.661 \fallingdotseq 21.7{\rm ~[W]}…(答)\end{eqnarray}}

※(3)と(4)は(2)の答えから {\small{P_{2}:P_{c2}:P_{o}=1:s:1-s}} を用いても求められますが、上記の求め方の方が採点官の印象はいいと思います。比は検算で使いましょう。
※題意から機械損は無視してよいため、(4)は(2)と(3)の答えから {\small{P_{2}=P_{o}+P_{c2}}}を用いて求めても良いと思います。

(5)
誘導電動機の効率 {\small{\eta~}}の定義式から、題意にある鉄損と機械損を無視すると、
 { \begin {eqnarray} \eta &=& \dfrac {電動機~軸出力} {電動機~軸出力+鉄損+一次銅損+二次銅損+機械損}×100 \\ &\fallingdotseq& \dfrac {電動機~軸出力} {電動機~軸出力+一次銅損+二次銅損}×100 \rm ~[%]…② \end{eqnarray}}

一次銅損 {\small{P_{c1}}}{\small{r_{1}}}での消費電力のため、

 { \begin {eqnarray} P_{c1} &=& 3~I_{1}^{~2}~r_{1} \\ &=& 3×3.1889^{2}×0.707 \\ &\fallingdotseq& 21.569{\rm ~[W]} \end{eqnarray}}

②式へ諸量を代入し、電動機の効率 {\small{\eta~}}を求める。

 { \begin {eqnarray} \eta &=& \dfrac {P_{o}} {P_{o}+P_{c1}+P_{c2}}×100 \\ &=& \dfrac {1061.4} {1061.4+21.661+21.569}×100  \\ &=& 96.084\fallingdotseq 96.1{\rm ~[%]} …(答)\end{eqnarray}}

以上。


※効率計算で一次銅損 {\small{P_{c1}}}を忘れないこと。
※問題文の但し書き「鉄損、機械損、励磁電流は無視」について、この但し書きが何を意味しているか?但し書きがない場合、どうなってしまうか?を是非考えてみて下さい。ただ計算できて、答えを出せるというのでは理解している、とは言えません。


【類題】
・平成13年
ほぼ同じ問題です、こちらは励磁回路を無視せずに鉄損を考慮した効率が問われています。

過去出題された内容が一部改変されて出題されることは多いので、過去問は何回もトレーニングして、まずは十分に理解し、その上で速く・丁寧に・正確に解けるように訓練しましょう。
…といいますか、2種二次試験で今まで出たことのない初見の問題が出題されても、本番ではまず解くことは難しいと思います。

ここ↓のP,299と、

電験二種 計算の攻略

電験二種 計算の攻略

ここ↓のP,145に
完全マスター電験二種受験テキスト 機械 (LICENCE BOOKS)

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載っていますが、計算の攻略の方が詳しかったです。

【ひとコト】
稀に出題される三種レベルの問題です。絶対に落とせません。


平成28年度 電験1種と電験2種の二次試験 問題
電気技術者試験センターの公式サイトです。ここから問題が見れます。

電験2種二次 平成28年 受験感想

電験2種二次 平成28年 機械・制御 問2