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[問題]電験2種二次 平成28年 電力・管理 問3


問題内容:送電線路…電線のたるみ
 難易度:★★☆☆☆(2種{\small{^{~-}}} レベル)
目標時間:★★☆☆☆(20分以内)

【問題】
電線のたるみに関して、次の問に答えよ。

図は電線のたるみを表している。点 {\small{ {\rm A、B} }}は同一水平面上にある二つの支持点であり、その間の距離を {\small{S {\rm ~[m]}}}、ここからたるみ {\small{D {\rm ~[m]}}}だけ下がったところにある最下点 {\small{ {\rm O} }} を座標軸の原点とした。
電線の形状は二次関数で表しても誤差は小さいことが知られているので、縦軸方向の変数 {\small{Y {\rm ~[m]}}}、横軸方向の変数 {\small{X {\rm ~[m]}}}、係数 {\small{a {\rm ~[m]}}}を用いて、
 {Y= \dfrac{~X^{2} }{2a}…①}
と表すことにする。

支持点における電線の張力を {\small{T {\rm ~[N]}}}、電線の単位長さ当たりの質量を {\small{W {\rm ~[kg/m]}}}として、たるみ {\small{D }} に関する②式を導出したい。
{\small{g {\rm ~[m/s^{2} ]}}}は重力加速度を意味している。
 {D= \dfrac{~WgS^{2}}{8T}…②}
f:id:hitorisuto:20161130111110p:plain
(1)
①式を基に支持点 {\small{ {\rm B} }} における電線の傾きを {\small{a}}{\small{S}} を用いて表せ。

(2)
支持点における張力の垂直分力が電線自重の半分に等しいことを用いて {\small{a}}{\small{T}}{\small{W}} で表せ。ただし、支持点での電線が水平直線となす角 {\small{\theta }} は小さいため、{\small{{\rm tan} \theta \fallingdotseq {\rm sin} \theta }} と近似すること。また、電線の長さは {\small{S}} と等しいものとする。

(3)
たるみ {\small{D}} は支持点の {\small{Y}} の値に他ならない。これに注意して上記の②式を導出せよ。


※以下は個人の回答例です。

【回答】
(1)
電線の傾き {\small{\alpha }} は①式の微分により求められる。
 {\alpha = \dfrac{dY}{dX} = \dfrac{d}{dX} \left( \dfrac{X^{2}}{2a}\right)=\dfrac{X}{a}}

問題の図より、{\small{X= s~/~2 }} であるため、上式に代入し、
 {\alpha = \dfrac{s~/~2}{a} = \dfrac{s}{2a}…(答)}

※微分は傾き、積分は面積を求めることができます。

(2)
題意より、支持点における張力の垂直分力は電線自重の半分に等しいため、電線の {\small{{\rm AB} }} 間の実長を {\small{L}} とすると、支持点 {\small{{\rm B} }} での力のベクトル図は下図のようになる。
f:id:hitorisuto:20161130113649p:plain
また、題意より {\small{{\rm tan} \theta \fallingdotseq {\rm sin} \theta }} と近似するとき、{\small{S \gg D}} となるため、{\small{L \fallingdotseq s}} となる。

※角度 {\small{\theta}} が小さいため、垂直成分である {\small{D}} を無視でき、結果、実長と径間がほぼ同じ長さ({\small{L \fallingdotseq s}})になるということです。

故に電線の傾き {\small{\alpha }} は力のベクトル図より、次式にて表せる。
 {\begin {eqnarray} \alpha &=& \dfrac{WgL~/~2}{T} = \dfrac{WgL}{2T} \\  &\fallingdotseq& \dfrac{Wgs}{2T} …(a) \end{eqnarray}}

(1)の解と(a)は等しいため、{\small{a}}{\small{T}}{\small{W}} で表すと、
 {\begin {eqnarray} \dfrac{s}{2a} &=& \dfrac{Wgs}{2T} \\ a &=& \dfrac{T}{Wg}…(答) \end{eqnarray}}

但し書きが何を意味するかが最も重要な部分です。数式は但し書きを表現しただけに過ぎません。図も合わせて理解しましょう。

(3)
たるみ {\small{D}} は題意の①式において、{\small{X= s~/~2 }} における {\small{Y}} の値のため、
 {\begin {eqnarray} D &=& \dfrac{~X^{2}}{2a} = \dfrac{~X^{2}}{2} × \dfrac{Wg}{T} \\  &=& \dfrac{~ \left(s~/~2\right)^{2}}{2} × \dfrac{Wg}{T} \\  &=& \dfrac{Wgs^{2}}{8T}…(導出終わり) \end{eqnarray}}
以上です。

【類題】
・平成11年
平成11年の方が圧倒的に難しいです。
平成28年の(1)〜(3)が平成11年では(1)にまとめて1問に集約され、(2)と(3)では更に応用の計算問題が出題されています。

そのため、平成28年は過去問をしっかり勉強していた方には大幅な時間節約ができるサービス問題だったと思います。
まず平成28年のこの問題を理解し、その後に平成11年の応用問題で発展にチャレンジしてみて下さい。

【今後の予想】
たるみ {\small{D}} の導出は試験制度変更後の出題が今回で2回目なので、暫くは出ないはず。同分野で出題されるとすれば5年後位に平成16年のような計算問題になるのかなと思います。

また、試験制度変更後から一度も出ていませんが実長 {\small{L=s+\frac{8D^{2}}{3s}{\rm ~[m]}}} の導出がそろそろ出てくるかもしれません。

【ひとコト】
試験日の朝5時に平成11年の類題を解いていたので、問題を見たとき心の中でガッツポーズしました。


平成28年度 電験1種と電験2種の二次試験 問題
電気技術者試験センターの公式サイトです。ここから問題が見れます。

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